幕末新選組

新選組の小説は数多くあれど、「永倉新八」を主人公にした小説といえばほとんどない。池波正太郎の「幕末新選組」はそんな数少ない永倉新八の物語である。

幕末に多くの志士を葬り去った新選組は、良くも悪くも華のある描かれ方をすることが多い。剛の男「近藤勇」、静かなる野獣「土方歳三」、結核の貴公子「沖田総司」などなど。彼等と比べると、永倉新八はいかにも地味である。

池波正太郎は、なぜそんな主人公を選んだのか。

それは業の深い新選組にあって、江戸っ子の粋とさわやかさを貫き通した剣士であるからのようだ。出世欲もなく、攘夷の熱におかされることもなく、ただ剣を愛し、武士としての道に生きる。そして大政奉還鳥羽伏見の戦いを経て、明治の世になれば、それはそれで時代の流れにも逆らわずに生きていく。新選組にはめずらしく大正まで生きた剣士。そんな、江戸っ子「永倉新八」が池波正太郎は好きだったのだろう。と思う。

なんていろいろ書いてみたが、この小説、とてもさわやかで面白いです。池波正太郎ってホントに江戸っ子が好きなんだなぁ、というのが分かります。ぜひ。

価格
480円
発売元
文春文庫
ISBN
4167142848商品を見る